よくあるご質問

 

予防・疫学編

Q.乳がんの危険因子には、どんなものがありますか?

A.様々なものが存在し、現在研究中ですが、下記の項に当てはまる方は注意が必要です。

 
乳がんの危険因子
・未婚の方
・初産年齢が30歳以上の方
・初潮が11歳以下であった方
・閉経年齢が55歳以上であった方
・近親者(2親等以内)が乳がんである方
・閉経後肥満が目立つ方
・避妊薬をご使用になっている方
・動物性脂肪摂取が多い方
・アルコール多量摂取の方
・喫煙歴 など
 

Q.食生活(乳製品・大豆イソフラボン・緑黄色野菜など)や嗜好品(アルコール・タバコ)は、乳がんのリスクになりますか?また、予防にはどんなものが挙げられますか?

A.乳がんのリスクとなるものも存在します。予防策としては適切な食生活と運動が挙げられます。

 極端な動物性脂肪の摂取は、乳がんのリスクを高くします。一方で、大豆イソフラボンや緑黄色野菜の摂取は、乳がんのリスクを抑える可能性が高いと言われています。
また、適度なアルコールの摂取は問題ないと考えられますが、アルコール摂取量が増加すればするほど乳がんのリスクは高くなるとされています。
喫煙は、明らかなデータが出てはいませんが、乳がんを含めたすべてのがんのリスク因子になると考えられています。

心当たりのある方は、少しずつ制限してみてください_(._.)_。

予防としては、適切な運動が挙げられます。これは、閉経後の肥満が乳がんの発症リスクを高めることが分かっており、肥満を予防することは乳がんの予防になるという考え方です。
また、現在科学的に証明はされていませんが、大豆食品や魚、野菜、果物、お茶などは乳がんの予防効果があるのではないかとされています。ぜひ試してみてください。

 

Q.肥満は、乳がんのリスクになりえますか?

A.閉経後の肥満はリスクになることが証明されています。

 特に、閉経後の肥満は乳がんのリスクと言えます。BMI 20の女性の乳がん発症リスクを1とした時、BMI25.1以上の女性のリスクは約2倍という研究結果が示されています。
閉経後は、女性ホルモンの低下により基礎代謝が落ち、どうしても肥満傾向になりがちです。
バランスのいい食事と適度な運動で肥満を予防しましょう。アンチエイジング学会専門医としてよいアドバイスを提供できると思いますので、なんなりとかんけクリニックにご相談くださいね。

 

Q.経口避妊薬(ピル)を定期的に内服しています。ピルは、乳がんのリスクを増加させますか?

A.日本では、現段階で経口避妊薬(ピル)と乳がんのリスクを関連付けるデータはございませんが、内服される際には婦人科の専門医と充分に相談が必要です。

 乳がんの6-7割はホルモン依存性(女性ホルモンの影響を受けやすい)のため、ピルは理論的に乳がんのリスクを増加させそうですよね(ピルは卵胞ホルモンと黄体ホルモンによって作られているため)。
しかし、現在日本で保険適応されている低用量ピルは、乳がんのリスク因子とされる根拠は存在しないため心配ないと考えます。
ただし、欧米では乳がんに対するピル内服のリスクが1.24倍と報告されている論文もあるため、ピル使用の日本人に対するリスクが今後新たに報告される可能性はございます。
よって、内服される際には、かかりつけの婦人科のDrと充分に相談してください。

 

Q.家族が乳がんの診断を受けました。自分が大丈夫か心配です。遺伝子検査など受けた方がいいのでしょうか?

A.遺伝子検査を受けることのメリット・デメリットを理解して判断してください。

 乳がん全体の約5~10%が遺伝性乳がんと報告されています。
あなた自身が乳がんになりやすい遺伝子を持っているかどうかは、詳しい検査をしてみないと分かりません。
この詳しい検査は、現在の日本では保険外の検査になるため、特殊な施設での自費による検査になります。
遺伝子検査をすることのメリットは、自身が乳がんになりやすいということを認識できること、自分の近親者もその遺伝子を持っている可能性があることを認識できること、それにより、適切に検診を受けたり、事前に予防的な治療を受けることができるという点です。

しかし、結果を知ることで、逆に精神的にダメージを受けることもあり、必ずしもメリットとはならない点を充分に理解することも大切です。
乳がんは早期発見することで根治しうる可能性が高くなります。無理に遺伝子検査を受けず、適切な検診を受け、早期発見に努めることも重要とわたしは考えます。

 

Q.私は45歳です。現在乳がんの治療中です。19歳の娘がいるのですが、乳がん検診はいつから受けさせればよいでしょうか?乳がんは遺伝性があると聞いていたので心配です。

A.明確な基準はありませんが、主治医の先生と相談し、1年~2年に一度くらい定期検診を受けてはいかがでしょうか。

 乳がんは、2親等までの家族には遺伝性が強く表れると言われています。
そしてあなたの娘さんは、普通の方と比較して約2~3倍くらい乳がんを生じやすいと考えられます。
しかし、全ての疾患には好発年齢があり、乳がんにも当然好発年齢が存在します。
乳がんの好発年齢は40~50歳と言われており、年々少しずつ若くなってきています。

しかし、われわれも20代の乳がんには遭遇する機会は少なく、基本的には30歳くらいから信頼できる主治医の先生を見つけて、定期検診を行ってはいかがでしょうか?個人差があるため、検査内容は主治医の先生に相談してみるとよいでしょう。
ただし、乳がんになった本人含め、娘さんも心配がぬぐえないのであれば、20代から積極的に検査を受けることも決して悪いことではありません。
検査を受けて安心することも精神的には非常に大切なことですからね。

 

検査編

Q.毎年検診を受診しています。受診する際、MMGとEcho(超音波検査)のどちらを受けた方がいいのか悩みます。どちらを受けた方がいいですか?

A.どちらの検査にも利点と欠点があり、それらをよく理解することが重要です。
MMGとEchoの利点と欠点を表にしてみました。

 
  MMG(マンモグラフィー) Echo(超音波検査)
利点

○しこりを形成しない乳がんでも、石灰化や乳腺のゆがみから乳がんを発見することができる。

○検査する側(技師)の技量に左右されにくい。

○MMGでは見えないような小さなしこりを発見することができる。

○被爆しない(妊娠中でも受けることができる)。

欠点

○被爆する(妊娠中はなるべく避けたい)。

○若い女性では、しこりなどが描出されにくい。(乳腺量が多いため)

○検査する側(技師)の技量に左右されやすい。

○非常に細かい石灰化は描出できないことがある。

 このように、どちらが適している検査か?というのは、受ける方の特徴によっても異なり、我々乳腺科のドクターにも難しい質問ということになります。
可能であれば、両方の検査を受けていただく方が病気の見落としが少なくなるのが現状と言えるでしょう。

 

Q.検診でカテゴリー3の結果が出ました。カテゴリーってなんですか?

A.検診で認められた所見を“がん”なのか、そうではないのか、仕分けすることが我々検診担当医の役目です。
その際、検診担当者が共通の認識を持つために定められた指標(通信簿みたいなもの)が“カテゴリー”です。

 一般に、カテゴリー3以上の方は“乳がん”の可能性が否定できないため、精密検査をお勧めします。
ただし、カテゴリー3の方に乳がんが見つかるケースは約8%と言われており、ほとんどが良性です。
そのため過度の心配は必要ありませんが0%ではありません。一度乳腺科を受診し、ドクターに詳しく聞いてみてはいかがでしょうか。

 

Q.乳がんの検査を受けたら、その日のうちに結果は分かるものですか?

A.乳がん検診としての検査は、一般に触診・マンモグラフィー・超音波検査などがあります。

 これらを、患者さんに合わせて行っていくのですが、施設によっては診察・検査予約→検査→診察・検査結果→追加検査・・・と来院が複数回に及んでしまうことも多々あります。
これは、乳がんだけでなく乳腺疾患が多岐に及んでいることから、乳腺外来の患者さん自体が増えてきていて、検査が予約しずらい現状が背景にあります。

 かんけクリニックでは、受診された患者さんの不安を1日でも早く拭うため、また1日でも早く病気を発見するため、可能な限りその日のうちに検査結果を説明し、その後の対処につきアドバイスできるよう心掛けています。

 

治療・フォローアップ編

Q.乳がんの治療には、どのようなものがあるのですか?

A.手術を中心に、化学療法(抗がん剤)・内分泌療法(ホルモン剤)・放射線・抗HER2療法(ハーセプチンetc)などがあります。

 乳がんは、手術を始め、放射線療法・化学療法(抗がん剤)・内分泌療法(ホルモン療法)・分子標的治療(ハーセプチンetc)のそれぞれが非常に高い効果を示すことが分かっています。
ただし、各治療単独で根治性を見出すことは非常に困難であり、これらの治療を組み合わせる集学的治療を行うことで根治性を高めていくことが重要です。

患者さんが、運悪く”乳がん”になってしまった場合でも、早期発見・適切な治療を行えば、根治する可能性を最大限まで高めることができます。
そのサポートをするために、私たち乳腺科のDr・Nsが存在します。患者さん個々の病気のTypeや希望を十分にお聞きした上で治療方針を決定していきますので、お気軽にご相談ください。乳腺・乳がんについての個々の悩み・疑問にかんけクリニックはお答えしていきます。

 

Q.乳がんの手術って、どんな手術なんですか?

A.多くは乳房部分切除術(乳房温存)+センチネル(見張り)リンパ節生検術を行っています。

 一昔前(約20~30年前)までは、乳房にできたどんな小さながんでも、乳房(時として大胸筋)全摘+腋窩郭清(腋のリンパ腺を全部取ること)が標準の手術と考えられていました。
しかし、この術式により、女性のシンボルでもある乳房がなくなってしまうこと、手術した側の腕のむくみや運動障害、しびれなどが一定頻度で出現してしまうことから、可能な限り術式を縮小できないか?乳腺外科医たちの間で検討に検討を重ねてきました。

こうして乳がんの術式はこの十数年で革新的な進歩を遂げ、現在では、しこりがある程度小さければ、乳房を温存する術式(乳房部分切除術)+見張り(センチネル)リンパ節生検術が世界的にも主流の術式となっています。
センチネルリンパ節とは、がんが転移する時に最も転移しやすいリンパ節のことです。リンパ節はリンパ管で連なって体の奥へ通じていきます。

乳がんは、転移をきたす際、このセンチネルリンパ節を最初に通って奥のリンパ節へ通じていくため、理論上、このセンチネルリンパ節に転移が無いことが分かれば、奥のリンパ節にも転移が無いことが証明されます。よって、手術中にセンチネルリンパ節を特殊な方法で見つけ出し、病理検査で転移が無いことが分かれば、それ以上の手術(腋窩郭清など)はしないことになります。

この術式によって、先にお話しした腕のむくみや運動障害、しびれなどの合併症は激減しました。
なお、当院ではPDE法(蛍光色素法)を用いてセンチネルリンパ節を見つけ出し、これまで非常に良好な結果を得ております。
もっと詳しく知りたい方は、お気軽にかんけクリニックまでご相談ください。

 

Q.先日乳がんの手術を受けました。後日、主治医から『手術後の治療として放射線治療に加え、化学療法(抗がん剤)治療も受けた方がいいよ。』と言われました。放射線治療や抗がん剤治療は受けた方がよいのでしょうか?

A.主治医の説明にご納得できたのなら、主治医の先生に従ったほうが良いと考えます。

 乳房温存手術を受けた場合には、可能な限り乳房への放射線照射をお受けになった方がいいと考えます。
無治療時の温存乳房への再発は約7~20%と報告があり、温存乳房への放射線治療により、再発率は半分以下にできると言われています。ですから、我々は乳房温存手術と放射線治療はセットと考えています。”放射線”と聞くと、副作用や合併症が怖いという印象を抱きがちですが、重篤な合併症はほとんどありません(まれに、肺炎などを合併するケースはありますが・・・)。担当する放射線科のDrとよく相談して受けられるといいと思います。

 化学療法(抗がん剤)については、手術を受けた時の乳がんの状態(病期やType)次第だと思います。
質問者さんの乳がんの状態を詳細に把握しないと明確なお答えはできないのですが、全身に対する乳がんの再発を抑えるためには、抗がん剤の使用をお勧めするケースもございます。
手術や放射線が乳房への局所治療であるのに対し、抗がん剤やホルモン治療は全身に対する治療であるからです。

現在の抗がん剤は、皆さんがイメージされているものよりも大分副作用が軽減されてきていますが、個人差はあるため、治療が開始される前や治療中も担当のDrと良くコミュニケーションをとることが重要です。
良く話をすることで、自分の病気の状態を深く把握し、抗がん剤が自分に必要か否か、判断しやすくなるのではないでしょうか?

 あくまで、全ての治療は患者さん本人のメリットとデメリットのバランスで成り立っています。患者さん本人が納得できるよう説明するのが医師の役目ですから、検査や治療に対する疑問点は、一緒に解決していきましょう。

 

Q.手術後は、どのくらいの間隔で通院することになりますか?

A.患者さんの治療経過や状態によります。

 手術後の治療内容や傷の状態などによるのではないか、と考えます。
術後の補助療法が終了した後は、大体3か月おきくらいに外来に通院していただくケースが多いと考えます。
ただし、必要な検査や診察は、主治医の判断にゆだねていることが多いので、患者さんによって個人差は生じてしまいます。